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アーク(Arc)
溶接時に電極と母材の間に放電する電気的な火花。このアークの熱(数千℃)によって金属を溶かします。アークの安定性は電流・電圧・電極材・シールドガスなどの影響を受けます。
アーク溶接(Arc Welding)
電極と母材間にアークを発生させ、その高熱で金属を溶融・接合する溶接法。多くの金属材料に対応可能で広く用いられています。
エンタルピー(Enthalpy)
エンタルピーとは、ある物体や系が持つエネルギーの一種で、特に「熱」と「仕事」のやり取りに関係する重要な指標です。内部エネルギーに圧力と体積の積を加えたもので、熱力学の分野では、加熱や冷却の過程を定量的に評価する際に用いられます。たとえば、材料を加熱する際にどれだけの熱が必要かを考えるとき、エンタルピーの変化を見ることでそのエネルギーの流れを把握できます。
エントロピー(Entropy)
エントロピーとは、系の「乱雑さ」や「無秩序さ」を表す物理量で、熱力学において非常に重要な概念です。エントロピーが高いほど、分子の動きが不規則で、エネルギーが拡散している状態を示します。自然界では、エネルギーは常により乱雑な状態(すなわちエントロピーの高い状態)へと向かおうとする傾向があり、これは不可逆な現象を理解するための鍵となります。
オーステナイト(Austenite)
オーステナイトとは、鉄鋼材料が高温状態で形成する組織のひとつで、特に炭素が多く溶け込んだ状態の面心立方格子構造を持ちます。この組織は、熱処理の際に重要な中間相として利用され、焼入れを行う際にはオーステナイトから他の硬い組織(たとえばマルテンサイト)へと変化します。オーステナイトは、ステンレス鋼などの非磁性材料の組織としても知られています。
オーステンパー処理(Austempering)
オーステンパー処理は、鋼をオーステナイト状態まで加熱した後、一定温度の溶融塩などに急冷し、その温度で保持することでベイナイト組織を得る熱処理法です。通常の焼入れよりも変形が少なく、靱性と耐疲労性に優れるため、ばねや歯車など高い信頼性が求められる部品に適しています。
ガス炉(Gas Furnace)
ガス炉は、都市ガスやプロパンガスなどの可燃性ガスを燃焼させ、その熱によって材料を加熱するタイプの工業炉です。火炎による加熱のため、立ち上がりが早く、温度調整がしやすい特徴があります。熱処理や加熱工程で広く使われており、コストや運用のしやすさから多くの現場で採用されています。
カム(Cam)
回転運動を非円形の曲線によって直線運動や揺動運動に変換する機械要素。自動機やプレス装置の工程制御に使われる。
キー(Key)
軸と歯車やプーリなどの動力を伝えるための嵌合部品。平行キー、かぎキー、テーパーキーなどがあり、トルク伝達に重要。
クリープ(Creep)
クリープとは、高温で長時間荷重をかけ続けたときに、材料がじわじわと変形していく現象です。ボルトやばねなど、長時間使用される部品では重要な設計要素であり、特に使用温度が材料の耐熱限界に近づく場合に注意が必要です。
コイルばね(Coil Spring)
コイルばねは、線材をらせん状に巻いて成形された、最も一般的なばねの一種です。圧縮・引張・ねじりなどさまざまな荷重に対応でき、機械装置や自動車、家電製品など多くの場面で使われています。その形状や材質、ばね定数を適切に設計することで、目的に応じた弾性エネルギーの吸収・放出が可能になります。
サーボモーター(Servo Motor)
サーボモーターは、位置・速度・トルクを精密に制御できるモーターで、自動機やロボットなどの高度な動作制御に欠かせない装置です。フィードバック機構を持ち、指定された動作通りに高精度で動くことが特徴です。産業用装置では、ばねの成形加工機や検査装置などにも広く使用されています。
サーモスタット(Thermostat)
サーモスタットは、設定された温度を維持するために加熱や冷却のオン・オフを自動で制御する基本的な温度制御装置です。家庭用のエアコンから工業用の炉まで、さまざまな温度管理に用いられています。熱処理炉では、炉内温度の安定化と品質維持に重要な役割を果たします。
シーケンス制御(Sequence Control)
シーケンス制御とは、あらかじめ定められた順序や条件に従って、機械や装置を自動的に動作させる制御方式です。スイッチのオン・オフやタイマー、センサーなどを用いて、工程を効率よく自動化できます。ばね成形機や熱処理ラインのような複雑な装置には、この制御が不可欠です。
シャフト(Shaft)
シャフトは、動力や回転運動を伝えるための棒状の部品で、自動機やばね機構ではばねの取り付け軸としても利用されます。疲労強度や回転精度が要求されるため、熱処理による強度確保が不可欠です。
ショットピーニング(Shot Peening)
ショットピーニングは、小さな金属球などを高速で表面に衝突させる処理方法で、金属表面に微小な塑性変形を与えることにより、残留圧縮応力を生じさせます。これにより、疲労強度が向上し、クラックの発生や進展を抑える効果があります。ばねや航空機部品など、長寿命が求められる部品に用いられます。
ショットブラスト(Shot Blasting)
金属表面に鋼球などの投射材を高速で当て、スケール・錆・バリなどを除去する処理。表面粗化や疲労強度向上にも寄与します。
ショット材(Shot Media)
ショットブラストに使われる投射材。鋼球・セラミック・ガラスビーズなどがあり、用途に応じて選定されます。
スラグ(Slag)
溶接時に酸化物やフラックスが溶融・凝固してできるガラス状の被膜。溶接金属を保護する役割ですが、溶接後は必ず除去する必要があります。
セメンタイト(Cementite)
セメンタイトは、鉄と炭素が化合してできる炭化鉄(Fe₃C)で、鉄鋼中に見られる非常に硬くて脆い組織です。焼なましや焼入れなどの熱処理により生成または分解され、鋼の硬さや強度に大きな影響を与えます。パーライトやマルテンサイトとともに、鋼の基本組織の一つです。
ソルトバス炉(Salt Bath Furnace)
ソルトバス炉は、溶融塩を加熱媒体として使用する炉で、急冷や保持温度の制御が非常に精密にできるため、変形や割れの少ない熱処理が可能です。特にオーステンパー処理や焼戻し処理で活躍し、均一な温度分布と熱伝達が特長です。
タクトタイム(Takt Time)
タクトタイムとは、生産ラインにおいて1つの製品を完成させるのに必要な基準時間のことを指します。たとえば、顧客の需要に応じて、1分に1個の製品を作る必要がある場合、そのタクトタイムは「60秒」となります。生産効率や人員配置、機械の稼働計画などを考える上で、非常に重要な指標となります。
たわみ(Deflection)
たわみとは、材料や構造物に外力が加わったときに生じる変形のうち、元の位置からのずれを指す量です。ばねや梁などに力をかけると、弓なりに曲がったり、沈んだりしますが、これが「たわみ」です。構造の強度設計やばねの性能評価において、たわみの大きさは重要な判断材料となります。
チャンバー(Chamber)
密閉空間としての炉内容室を指し、特に真空炉や雰囲気炉において重要な構造部です。気密性・断熱性・保守性が設計上の鍵であり、ステンレスやハステロイなど高耐食性材料が用いられることもあります。
トルク(Torque)
ねじや軸などをねじる力の強さを示す物理量(単位:N・m)。機械締結・駆動装置・クラッチなど、幅広い場面で登場。
ねじのピッチ(Pitch)
ねじ山同士の山の間隔。粗目・細目の区別があり、締結力・振動耐性・ねじ戻りの防止設計に関係。
ねじの呼び径(Nominal Diameter)
ねじの外径を表すサイズ名。M8やM10などが代表で、JISによって寸法が標準化されており、ねじ部品の設計・選定で必須知識。
ねじりばね(Torsion Spring)
ねじりばねは、軸を中心に回転する力(トルク)に対して反発力を生むばねで、たとえば洗濯ばさみやシャッター、クラッチ機構などで使われます。らせん状に巻いた形状が一般的で、回転方向の変位に対する弾力性を持ち、必要な角度やトルクを正確に制御することが可能です。
パーライト(Pearlite)
パーライトは、鉄鋼をゆっくり冷却したときに得られる層状構造の組織で、フェライトとセメンタイトが交互に重なった状態になっています。この構造は適度な強度と靱性を兼ね備えており、熱処理後の機械構造用鋼などに広く見られます。黒と白の縞模様が顕微鏡観察で確認できます。
バッチ炉(Batch Furnace)
バッチ炉は、製品を一定量まとめて装入し、加熱・冷却を一括して行う形式の熱処理炉です。連続運転の炉と異なり、品種や処理条件の切り替えが容易で、多品種少量生産に適しています。作業サイクルは投入→加熱→冷却→取り出しのバッチ(単位作業)で構成されます。
ばね(Spring)
ばねとは、外力を受けたときに変形してエネルギーを蓄え、外力が除かれると元に戻るという「弾性」の性質を持つ機械要素です。圧縮・引張・ねじりなど多様な力に対応でき、機械装置の振動吸収・荷重保持・位置決めなどに利用されます。日常生活から産業機器まで非常に広く使われています。
ばね定数(Spring Constant)
ばね定数とは、ばねの「硬さ」を表す数値で、単位変位(1mm)あたりに必要な力(N)を示します。ばね定数が大きいほど、ばねは硬く変形しにくくなります。記号「k」で表され、「F=k×x」のフックの法則に基づいて力と変形量を計算できます。設計時には非常に重要なパラメータです。
ばね疲労(Spring Fatigue)
繰り返し荷重によってばねが劣化・破損する現象。ばね寿命を左右する重要因子であり、疲労限度や応力振幅の制御によって防止します。ショットピーニング処理は疲労寿命延長の代表的手段です。
はめあい(Fit)
軸と穴など、嵌合部品の隙間やしまり具合を表す設計基準。すきまばめ、しまりばめ、中間ばめがあり、機械精度と信頼性を左右します。
ヒーター(Heater)
ヒーターは、電気エネルギーを熱エネルギーに変換する装置で、加熱処理や温度保持に使用されます。金属製の電熱線やセラミックヒーターなどの種類があり、電気炉や温調装置、産業機器、家電製品など多岐にわたる用途があります。素早い加熱と高温制御が可能です。
ひずみ(Strain)
ひずみとは、材料に外力が加わって変形したときの、元の長さに対する変形量の割合を指します。伸びたり縮んだりする「相対変化」を数値で表すもので、単位は通常「%」または「無次元量」です。応力との関係から、材料の弾性や塑性、破断のしやすさなどを評価する際に重要です。
フェライト(Ferrite)
フェライトは、鉄に比較的少量の炭素が溶け込んだ、体心立方構造を持つ軟らかい組織です。磁性を持ち、低炭素鋼の常温における主成分でもあります。熱処理や加工時の基礎的な金属組織として重要で、靱性に富み、切削や溶接性にも優れています。
フレーム(Frame)
フレームは、ばね機構や熱処理炉などの構造体を支える骨格となる部分です。強度・剛性・加工精度が求められ、振動や熱変形の影響を受けにくい設計が重要です。大型機械では鋳物や溶接構造が採用されます。
プロパンガス(Propane Gas)
プロパンガスは、液化石油ガス(LPG)の一種で、可燃性のある無色・無臭のガスです。家庭用・工業用燃料として幅広く使われており、特に熱処理炉などの加熱源としても利用されます。燃焼時に高温を発生し、取り扱いも比較的容易なため、工場の炉設備や移動式の加熱装置でも多用されます。
ベイナイト(Bainite)
ベイナイトは、焼入れ中間温度(およそ250~550℃)で形成される組織で、マルテンサイトよりも靭性に優れ、セメンタイトとフェライトの微細混合構造を持ちます。耐摩耗性や疲労強度に優れるため、自動車部品や工具などで活用されることが多いです。
へたり(Sagging)
へたりとは、ばねやクッションなどの弾性部品が長期間使用された結果、元の形状や反発力を維持できなくなり、永久変形が生じる現象を指します。材料内部での微小な変形の蓄積や、使用温度の影響により発生します。ばねの設計では、へたりの発生を防ぐための耐久性評価が不可欠です。
ホットセッチング(Hot Setting)
ばねなどの金属部品を高温で一定時間保持して、初期の残留応力やたわみを除去する工程です。ばねの初期伸び・応力緩和を防ぎ、寸法安定性を向上させる目的で行われます。
ホットプレス(Hot Press)
加熱と圧力を同時に加える装置で、樹脂・ゴム・金属などの成形や接着に用いられます。加熱方法には電気ヒーター・油圧・蒸気・誘導加熱などがあり、均一な温度分布と高精度な加圧が求められます。
マッフル(Muffle)
炉内の加熱室を保護するための内箱(マッフルチューブ・マッフルボックス)で、直接炎や雰囲気からワークを隔離する目的で使われます。金属製・セラミック製などがあり、酸化防止や雰囲気制御が求められる処理に使われます。
マルテンサイト(Martensite)
マルテンサイトは、鋼を高温から急冷する「焼入れ」処理によって形成される、非常に硬くて脆い金属組織です。炭素を多く含んだ非対称な格子構造を持ち、高い硬度と引き換えに靱性が低下します。焼戻しによって靱性を調整することで、工具鋼や構造用鋼などの性能向上が図られます。
モーメント(Moment)
力がある点を基準に回転させようとする力と距離の積(単位:N・m)。設計では、軸・梁・ばね・ボルト締結部などに働く応力の基礎として非常に重要な力学概念。
圧縮ばね(Compression Spring)
圧縮ばねは、力を加えると縮む方向に働くばねで、最も一般的な形態のばねのひとつです。力を受けることで圧縮され、その反力を利用して押し返す動作を行います。自動車のサスペンションやバルブ、緩衝装置などに広く使われています。
引張ばね(Tension Spring)
引張ばねは、両端を引っ張ることで力を受け、その変形に対して元に戻ろうとする復元力を生じるばねです。主に両端にフックがついており、扉の自動開閉や機械のバランス装置などに用いられます。初張力があることで、最初の引張にも耐える特性があります。
応力(Stress)
応力とは、外力を受けた材料の内部に生じる、単位面積あたりの内力を指します。引張、圧縮、せん断などの形で表れ、単位はN/mm²(Pa)です。材料の破壊や変形の原因となるため、機械設計においては応力の分布や最大値の把握が非常に重要です。
応力緩和(Stress Relaxation)
材料が一定の変形を受けた状態で、時間の経過とともに内部応力が徐々に減少する現象。高温環境下では特に顕著であり、ばねや締結部品においては製品性能に影響を及ぼすため、ホットセッチングで事前に対処する場合があります。
温調ユニット(Temperature Control Unit)
加熱・冷却を制御する機器。ヒーターや冷却水の流量を調整して、ホットプレスの温度を精密に管理します。温度プロファイル設定機能を持つタイプもあります。
慣性モーメント(Moment of Inertia)
物体が回転しにくい性質を表す量。回転体の設計やねじり応力の計算、加速時の動力計算で使われます(単位:kg·m²)。
幾何公差(Geometric Tolerance)
寸法以外に設ける形状や位置の許容誤差(例:直角度、平行度、同心度)。JISで図示方法が定められており、高精度組立に不可欠。
急冷(Quenching)
急冷とは、材料を高温から一気に冷却する処理方法で、通常は水や油、空気などの冷却媒体を使用します。鋼材の焼入れに代表されるように、マルテンサイト変態を促進し、材料の硬度や強度を高める目的で実施されます。ただし、急激な温度変化により変形や割れが生じやすいため、条件選定が重要です。
均熱処理(Soaking)
加熱工程において、ワーク全体が均一な温度に達するまでの保持処理を指します。温度ムラによる組織不均一や歪みを防ぐ目的で、保持時間の設計が極めて重要です。炉内温度分布(均熱性)も品質に大きく影響します。
空冷(Air Cooling)
空冷は、自然空気またはファンによる送風によって材料を冷却する方法です。急冷に比べて冷却速度が穏やかで、熱応力や変形を抑えたい場合に用いられます。焼戻しや焼なましなど、穏やかな冷却が望ましい熱処理に適しています。
最大応力(Maximum Stress)
最大応力とは、ばねや構造物が使用中に受ける応力の中で、最も大きな値を指します。特にばねの設計においては、最大応力が材料の疲労限度や降伏強さを超えないように注意する必要があります。長期使用における信頼性確保のため、正確な計算と検証が求められます。
皿ばね(Disc Spring)
皿ばねは、円錐状の円板形をしたばねで、比較的短いストロークで大きな荷重に耐える特性を持っています。積み重ねて使うことで荷重や変位量を調整でき、省スペース化にも寄与します。クラッチやバルブ、締結部品など、限られた空間で高い反力が必要な用途に適しています。
酸洗(Pickling)
金属表面から酸を用いて酸化スケール(黒皮)やサビ、不純物を除去する処理。主にステンレス鋼や炭素鋼の溶接後処理に用いられ、溶接焼けの除去や表面を清浄化して次工程へ備える目的がある。使われる薬品には硝酸+フッ酸混合液などがあるため、安全対策が重要。
残留応力(Residual Stress)
残留応力とは、熱処理や加工後に材料内部に残る、外力がかかっていない状態でも存在する応力のことです。これが原因で変形や割れ、寸法変化が起こることもあるため、製品の品質や耐久性に大きな影響を与えます。ショットピーニングなどで意図的に有利な残留応力を与える場合もあります。
時効処理(Aging)
時効処理とは、一定の温度で金属材料を一定時間保持し、析出物を成長させることで、強度や硬度を調整する熱処理法です。アルミ合金や析出硬化系の鋼材に多く用いられ、機械的性質を改善する手法の一つです。自然時効と人工時効の2種類があります。
治具(Jig)
治具は、加工や組立の際にワーク(部品)を所定の位置に固定したり、正確な位置決めを補助したりする装置・工具です。精度の高い作業や自動化された工程では欠かせない存在で、生産効率や再現性の向上に大きく貢献します。
軸継手(Coupling)
2本の軸をつなぎ、回転やトルクを伝達する機械要素。ミスアライメント吸収のためのフレキシブル継手も多く使われる。
軸受(Bearing)
回転する軸を支持し、摩擦を減らす部品。玉軸受・ころ軸受・すべり軸受に分類され、潤滑方式・荷重方向・耐久性設計などが関係。
初張力(Initial Tension)
初張力とは、引張ばねが伸び始めるために必要な最小の力のことを指します。引張ばねは自然状態でも少し力が加わった状態で作られていることが多く、その結果、ばねを伸ばすにはある一定の力を超える必要があります。この初張力により、部品同士のがたつきを防いだり、安定した機構動作が実現できます。
昇温時間(Ramp-up Time)
昇温時間とは、加熱装置や炉が目標温度に達するまでにかかる時間を指します。加熱速度が速いほど生産性が高くなりますが、急激な温度変化は材料の変形や破損のリスクを伴うことがあります。適切な昇温制御は、品質とエネルギー効率の両立にとって重要な要素です。
焼き割れ(Quench Cracking)
焼き割れは、焼入れによる急冷過程で内部応力が集中し、材料が割れてしまう欠陥です。主に冷却速度が速すぎたり、材料に不均一な組織があると発生しやすくなります。適切な加熱温度や冷却媒体の選定、焼戻しの実施が予防に有効です。
焼け(Weld Discoloration)
ステンレス鋼などを溶接した際に高温部が空気中で酸化し、虹色や茶色に変色した状態。酸洗や機械研磨で除去する必要がある。耐食性低下の原因になるため、食品・医療機器・真空機器などでは特に注意が必要。
焼なまし(Annealing)
焼なましは、金属を加熱した後、ゆっくりと冷却する熱処理方法で、内部応力の除去や軟化、加工性の改善、組織の均一化などを目的としています。冷却の速度や温度条件によって、目的に応じたさまざまな種類の焼なましが存在し、製品の安定性向上や後工程の効率化に貢献します。
焼鈍(Stress Relieving)
焼鈍は、加工や溶接などで発生した内部応力を比較的低温で加熱して除去する処理です。材料の変形や割れを防ぐため、精密な加工品や溶接構造物に対してよく行われます。完全な再結晶や軟化は起こさず、寸法安定性の向上が目的です。
焼入れ(Quenching)
焼入れは、鋼を高温に加熱し、その後急冷することで、硬くて強い組織(マルテンサイト)を得る熱処理です。強度や耐摩耗性の向上が目的ですが、応力や変形が発生しやすいため、焼戻しなどの後処理とセットで行われるのが一般的です。工具や金型、構造部品などに広く使われています。
焼戻し(Tempering)
焼戻しは、焼入れで硬くなった金属を、適度な温度で再加熱して靱性(粘り強さ)を付与する処理です。硬さを若干下げることで割れにくくなり、実用性の高い材料特性を実現します。用途に応じて温度を変えることで、最適なバランスの機械的性質を引き出せます。
浸炭処理(Carburizing)
浸炭処理とは、鋼材の表面に炭素を浸透させて硬化させる熱処理方法です。表面は高硬度で摩耗に強く、内部は柔らかくて粘り強いという、理想的な特性の組み合わせを得られるため、ギアやシャフトなどの部品に多く用いられています。ガス浸炭や真空浸炭などの方式があります。
浸窒処理(Nitriding)
浸窒処理は、窒素を拡散させることで表面を硬化させる窒化処理の一種で、主にアンモニアやプラズマ窒化によって行われます。変形が少なく、高硬度の窒化層を形成するため、歯車・シャフト・ばねなどの耐摩耗用途に広く用いられています。
真空炉(Vacuum Furnace)
真空炉は、内部を真空状態にして熱処理を行う装置です。酸化や脱炭を防ぐことができ、非常に高品質な仕上がりが得られます。工具鋼の熱処理や、特殊合金の精密処理などに適しており、表面のきれいさや寸法精度が求められる場面で重宝されます。
水冷(Water Quenching)
水冷とは、水を用いて材料を急速に冷却する処理方法です。冷却速度が非常に速いため、マルテンサイトなどの硬い組織を得やすい一方で、応力や割れが生じやすいというリスクも伴います。鋼の焼入れや、冷却の必要な製品の処理などに使われます。
制御盤(Control Panel)
制御盤は、各種装置の動作・温度・タイミングなどを一元的に管理・操作するための装置です。スイッチ、リレー、タイマー、PLC(プログラマブルコントローラ)などが組み込まれ、現場の自動制御や監視の中心的な役割を果たします。安全性や操作性の確保も重要な設計要素です。
成形加工(Forming)
成形加工とは、金属の線材や板材を押したり引いたりして、目的の形状に変形させる加工方法です。ばねの巻き加工やプレス加工、曲げ加工などが含まれ、工具と金型を用いて精密かつ大量に成形できます。塑性変形を利用するため、材料に亀裂が入らないよう管理が重要です。
塑性変形(Plastic Deformation)
塑性変形とは、材料に力を加えて変形させた際、その力を取り除いても元に戻らない永久的な変形のことです。ばねの加工や金属の鍛造、プレスなど、意図的に形を変える加工ではこの性質が利用されます。材料の塑性限界を超えると、破断や亀裂の原因になります。
耐火レンガ(Refractory Brick)
高温に耐えるための炉内壁材で、アルミナ・シリカなどを主成分としたものがあります。蓄熱性が高いため昇温・冷却に時間を要しますが、耐久性や構造強度に優れるため、大型炉や高温域で使用されることが多いです。
断熱材(Insulation Material)
断熱材は、熱の移動を防ぐために使用される素材で、炉の内部や配管などに使われます。セラミック繊維やグラスウール、耐火れんがなどがあり、外部への熱損失を減らすことで省エネルギーと安全性の向上に寄与します。温度条件に応じて選定されます。
窒化処理(Nitriding)
窒化処理は、金属の表面に窒素を拡散させて硬化させる表面改質処理の一種です。炭素を用いる浸炭と異なり、比較的低温で処理できるため、変形が少なく、しかも表面に高硬度な窒化層を形成できます。耐摩耗性や耐疲労性の向上を目的に、金型やギア部品などに用いられます。
電気炉(Electric Furnace)
電気炉は、電熱ヒーターや誘導加熱などを利用して材料を加熱する熱処理炉です。ガス炉に比べて温度制御がしやすく、環境への配慮やクリーンな加熱が可能です。特に精密な処理や酸化防止が求められる材料に適しています。
投入口(Charging Port)
投入口は、ワーク(被処理物)を炉に投入するための開口部で、手動式・自動搬送式などのタイプがあります。熱損失を防ぐための開閉機構(エアロック式、シャッター式)や、雰囲気ガスの漏れ対策も重要な設計ポイントです。
熱効率(Thermal Efficiency)
熱効率は、加熱に投入されたエネルギーのうち、どれだけ有効に利用されたかを示す指標です。エネルギーコストや環境負荷を考慮するうえで重要で、炉や装置の省エネ性能を比較する際の目安にもなります。断熱材の性能や熱回収装置の有無が影響します。
熱処理(Heat Treatment)
熱処理は、金属材料の性質を変化させるために、加熱・保持・冷却といった工程を行う技術です。代表的な処理には焼入れ、焼戻し、焼なまし、浸炭などがあり、硬さ、靭性、耐摩耗性、加工性などを最適化できます。機械部品の性能や寿命に直結する重要な工程です。
熱伝導(Heat Conduction)
熱伝導とは、物体内部を通して熱が高温部から低温部へ移動する現象です。金属のように熱を伝えやすい材料と、断熱材のように伝えにくい材料があり、加熱や冷却の設計においてはこの特性の理解が不可欠です。伝導率(熱伝導率)は素材選定の基準にもなります。
熱電対(Thermocouple)
熱電対は、2種類の異なる金属を接続したセンサーで、接点の温度差によって生じる電圧を測定し、温度を算出する装置です。構造がシンプルで高温まで測定可能なため、工業用炉や製造現場で広く使われています。種類(K、J、Tなど)により測定温度範囲が異なります。
熱風循環(Hot Air Circulation)
炉内の温度を均一化するため、ファンなどで熱風を強制的に循環させる仕組みです。強制対流炉(ファン付き炉)ではこの方式が標準であり、炉内均熱性の向上や昇温時間の短縮に寄与します。
熱容量(Heat Capacity)
熱容量とは、物体の温度を1℃上昇させるのに必要な熱量を示す物理量です。質量に比例し、比熱と質量の積で求められます。熱容量が大きい物体は加熱・冷却に時間がかかるため、加熱装置や材料の選定において重要な設計要素となります。
板ばね(Leaf Spring)
板ばねは、板状の金属を曲げて作られたばねで、自動車のサスペンションや機械部品のクッションなどに使用されます。積層構造にすることで荷重を分散でき、大きな変形にも耐えられます。板の長さや厚さ、枚数によりばね特性を調整可能です。
比熱(Specific Heat)
比熱は、物質1gの温度を1℃上げるのに必要な熱量を表す物理定数です。水の比熱は高く、金属の比熱は低いため、加熱・冷却の設計で大きな影響を及ぼします。温度制御や熱処理条件の設定において重要な指標です。
疲労試験(Fatigue Test)
疲労試験は、繰り返し荷重をかけて材料がどのくらい耐えられるかを評価する試験です。ばねや回転体など、長時間使用される部品の耐久性を予測するうえで不可欠な試験方法です。破断までの繰返し回数(寿命)や疲労限度を調べます。
被覆アーク溶接(SMAW)
被覆された溶接棒を手で操作する溶接法。野外や簡易な現場で重宝され、設備も比較的簡素です。
表面粗さ(Surface Roughness)
加工された表面の微細な凹凸の程度を表す数値(Ra、Rzなど)。軸受部や摺動部では摩擦・耐久性・潤滑性能に直結します。
雰囲気ガス(Atmosphere Gas)
雰囲気ガスは、熱処理中に炉内に導入されるガスで、酸化防止や反応促進、表面処理などの目的で使用されます。窒素、水素、炭化水素系ガスなどが使われ、処理目的に応じた制御が重要です。雰囲気の安定性は製品品質に直結します。
雰囲気炉(Atmosphere Furnace)
雰囲気炉は、処理対象を特定のガス雰囲気下で加熱することができる熱処理炉です。酸化を防ぎながら加熱する必要がある処理や、浸炭・窒化などの表面改質に用いられます。密閉性とガス供給システムが重要な構成要素です。
変形(Distortion)
変形とは、加熱や冷却、機械加工などによって材料の形状が意図せず変わってしまう現象です。熱処理後に寸法がずれたり、曲がったりすることがあり、製品の精度や機能に影響を与えるため、あらかじめ予測・管理することが求められます。
変態点(Transformation Point)
変態点は、金属の組織構造が別の形に変化する温度を指します。たとえば、鉄鋼材料では、フェライトからオーステナイトに変わる温度(A₁、A₃点など)が変態点に相当します。正確な熱処理のためには、この温度を把握しておく必要があります。
防爆仕様(Explosion-Proof)
防爆仕様とは、火花や高温によって爆発の恐れがある環境でも安全に機器を使用できるよう設計された構造のことです。主に化学プラントや可燃性ガスを扱う現場などで用いられます。電気炉や制御盤にも防爆対応が求められる場合があります。
摩擦係数(Coefficient of Friction)
物体同士の接触面に働く摩擦力の大きさを表す係数。静止摩擦係数と動摩擦係数があり、すべり設計やトルク伝達に関係。
油冷(Oil Quenching)
油冷は、焼入れにおいて水よりも緩やかな冷却速度を実現するために使用される冷却方法です。急冷による割れや変形を抑えながら、硬化を得たい場合に適しており、工具鋼や複雑な形状の部品に利用されます。冷却性能は油の種類や温度によって変わります。
冷却速度(Cooling Rate)
冷却速度とは、熱処理中に材料が冷却される際の温度低下の速さを指します。冷却速度によって材料の内部組織が変化し、硬度や靱性などの機械的性質が左右されます。適切な冷却速度を選定することで、変形や割れを防ぎつつ所望の特性が得られます。
炉内温度分布(Uniformity)
炉内温度分布は、加熱炉内部での温度の均一さを示す指標で、特に熱処理の品質を左右する重要な要素です。温度ムラがあると、処理物ごとに性質がばらついてしまい、製品不良の原因になります。温度センサやシミュレーションを活用して均一性を管理します。
A
B
C
D
E
F
G
H
I
J
K
L
M
MAG溶接
CO₂や混合ガスを使用し鉄鋼を溶接する方法。溶接スピードとコスト面で優れ、構造物に多用されます。
MIG溶接(GMAW)
半自動的にワイヤ供給を行う溶接法で、主に非鉄金属や薄板の高速溶接に向いています。作業性が良好です。
N
O
P
PID制御(PID Control)
温度制御における標準的な制御方式で、比例(P)・積分(I)・微分(D)の3要素を組み合わせて、温度の過不足を滑らかに補正する技術です。産業炉の精密な温度管理において不可欠な制御方式です。
PLC(Programmable Logic Controller)
産業用制御装置で、炉の運転(温度制御・タイマー・アラーム・安全機構)などを自動制御する中核装置です。タッチパネルと連動して操作性と信頼性の高い炉制御システムを構築できます。
Q
R
S
SSR(Solid State Relay)
半導体で構成された無接点リレーで、接点の摩耗がなく、長寿命かつ高速応答が可能です。ヒーター制御などに多用され、制御盤内での発熱対策も重要です。
T
TIG溶接(GTAW)
不活性ガス中でタングステン電極を使って行う高精度な溶接法。溶け込み制御性と外観仕上がりに優れます。
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